夕夏も同じことを思い出しているのだろうか、靡く前髪を抑えつつも、足の動きを止め、水平線の向こう側を眺める。
俺はそんな夕夏に近づき、肩に手を置いた。
「夕夏。」
振り返った夕夏は眉尻を下げて、切なげに笑った。
「言いたいことが、あるんでしょ。」
「あ………いや。」
「ほんとは今、言わなきゃいけないことがあるんでしょ?あたしに。」
夕夏はなんでも分かっている。
それがたまに辛くなる。
さすが幼なじみだ。
言葉にしなくても以心伝心というのだろうか、俺の気持ちは夕夏にすぐに伝わる。
「聞いて欲しいことが、あるんだ。」
「うん。」
決心した、そういった表情をした夕夏を誘い、波打ち際から少し離れた砂浜に並んで腰を下ろした。


