いちについて、




通学路として使用している大通りを抜け、海の見える国道まで出る。

道路沿いをしばらく真っ直ぐに走る。


ここは歩道が広いからふたり並んで走ることが出来る。


二人の間に会話はない。


どちらも何も話はしない。


ただ、お互いの呼吸音と足音だけをしっかり捉えて、前を見据えて走る。



気づけば、隣町の境目あたりまで来ていた。



赤信号で止まったところで、膝に手を置いた夕夏に向かって聞いた。



「これくらいにしとく?」



「うん、そうかな。」



夕夏は自身の時計に目をやる。


俺もつられて自分の時計を見てみる。

もう、7時近くなっていた。



走っているせいか、まだほとんど空腹を感じることはなく、ほどよい気分だ。



俺は周りを見渡してみた。



ここまで来るのは久々だ。


よく泰知と来たりしていたが、泰知がいない今、ここまで無心で走ることはほぼ無かった。