いちについて、




俺はこのくらいの時間帯が一番好きだ。


朝と日中の間。


太陽の角度がまだ小さい時間。



街が動き出す感覚を感じるのが凄く好きだ。



ライトグリーンのまだ新品のランシューに足を入れ、ビビットピンクの靴紐をきつく締める。



家の鍵をそっと開け、外に出るとまだ初春らしく肌寒さがある。


高いジャンプをしてから膝裏を伸ばし、ふう、と一息ついてから走り出す。



今日も晴れてよかった。



今日も気持ちよく一歩を踏み出せる。


夕夏の家が近づくと同時に、そこにある人影もしっかり捉えられるようになる。



俺の足音、息遣いに気がつくと、夕夏はいつものルーティンであるふくらはぎを伸ばすストレッチをやめ、こちらに向かって手を振る。


俺も手を振り返し、徐々に走るスピードを落とした。