片手をあげて夕夏に合図し、家に入るのを見届けてから自転車に跨る。
風を切って自転車を漕ぎ出す。
自転車に乗るのも、それほど悪くは無い。
走るのとはまた違った風の感じ方が、そこにはあるのだ。
キィキィと俺の重さに軋む自転車の音も、今は何故か心地よい。
夕夏をランニングに誘うことが出来たからだろうか。
なんにせよ、明日は6時には夕夏の家に着くように起きなければならない。
早起きは得意だ。
毎日5時半に起きて家の周りを走っているくらいだからそれほど苦ではない。
明日、学校が休みでよかったと心の底から思う。
久々に夕夏と走れる。
その嬉しさからか、俺はついに腰を上げ、自転車を立ち乗りで漕ぐ。
風はまだ少し肌寒かったが、とても心地いいものではあった。


