「話したいことがある。話さなきゃいけないことがある。でもその前に、ちょっとだけ走ってこないか?いいだろ、たまには。」
一息で言うと、夕夏は最初困ったように、それから無表情になってから苦痛に顔を歪ませ、最後には眉をハの字に下げて笑った。
「そうだね。」
やっぱり、夕夏は走っていなければいけないのだ。
夕夏には、陸上の世界にずっといて欲しい。
「何時?」
「朝の、6時とか?」
「好きだね、朝。」
澄んだ空を夕夏は見上げる。
俺もつられて空を見上げる。
「ああ、好きだよ。朝、いいだろ?」
「わかった。迎えに来てね?」
「もちろん。」
夕夏は首を縦に振り、じゃあ、と家の中に入っていった。


