いちについて、




お前みたいにバカで阿呆でろくでなしなくせに、人気者で誰よりも輝いてる。


そんなお前の存在は、誰よりも特別だったんだ。



お前が死んだから。



夕夏だって走れなくなった。


俺だって迷うことが増えた。




なあ、もう一回戻ってこいよ。




「帰ろう。」



自転車のハンドルをグッと握った手の上に、夕夏がふわりと自分の手を重ねる。



その瞬間、篭っていた力はどこかに抜け出て、両手が楽になる。



「ん。」




伝えるべきことがたくさんあるのに、俺はまだ弱すぎるんだ。


夕夏が自力で陸上部に戻ることしか祈れない。


俺はなんて、バカなんだろう。