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「この写メさ、なんかあいつ、一番輝いてるように見えるよな。」
夕夏に見せると、何度も大きく首を縦に降って見せた。
暦の上ではもうすでに春ではあるが、まだまだ寒さに怯んでしまう、三月初めのことだ。
来月にはシーズンインするため、ほぼ毎週大会がある。
夕夏はまだ、陸上部に復帰してはいない。
泰知が死んでからそろそろ5ヶ月が経つ。
俺もまだ、後ろ髪を引かれるような思いではあるが、あいつのために陸上を続けなければならないという義務を背負っていた。
夕夏はまだ、陸上部に戻れていない。
夕夏は俺以上に、なにか苦しい思いをしているのだと推測するくらいしか、俺にはできない。
きっと、泰知の思いを知ったら、夕夏はすぐにでも走り出すと思う。
だけど、それを俺の口からうまく説明できるほどの余裕が、俺にはない。
だからと言って、二宮に頼むわけにもいかない。
俺はまだ、夕夏と同じように迷っているのかもしれない。


