すると、突然人の声が聞こえてくる。
聞こえてきたどよめきに、観客の視線の先を追う。
俺は思わず、足を止めてしまった。
そこから、動くことが出来なくなった。
あんぐりと開いてしまった口は塞がらない。
白いゴールテープを両手を挙げながら切ったのは、藍色の、山仲高校のユニフォームではなかった。
「どういう事だよ。」
考えるよりも先に口から言葉が出る。
あんなにも上手くでき過ぎた展開で、生き生きと走っていた彼女の姿はどこにも無かった。
ただ、遠くから聞こえてくる救急車の音だけが、俺の心を揺さぶる。
「夕夏………」
行き先は分からなかった。
ただ足が勝手に動き出した。
そう、表現する以外の方法を、俺は思いつくことが出来ない。
こんな展開を、いったい誰が予測することが出来たと言えるのだろうか。