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もし、陸上部に戻って来れなかったら。


今はそう考えるだけでも恐ろしい。

自分はなんて間違いをしていたのだろうと随分長い間考えていた。



どうして、陸上から離れようとしていたのか。

今となれば、その答えすらわからない。



だけれど確かにわかることは、あたしは陸上が好きで、陸上をしている自分が好きで、陸上を自分から取り除くということが出来ないということだ。



こんな自分が一番自分らしいと、最近考えることができるようになった。



今、こうして先頭を走っていて、後ろを追われていて、アンカーであるということがものすごく快感で心地いい。



これが好きなんだと感じる。


もうすぐで、最後の県駅伝が終わる。

きっと、都大路に行くのは決まりであるから、あともう2ヶ月は走らなければいかなくなるだろう。



だけど、まだもう少しだけ、楓や後輩と走ることが出来る。



もう少し先にあるゴールを越えた瞬間の自分を想像しながら、上り坂に差し掛かった。