憶測になるけれど、光里は怪我から復帰して休まずに練習の量を戻したに違いない。
怪我がぶり返すことも承知で、もしかしたらぶり返しながらも、あたしに越されたくない、負けたくないという思いで走ってきたに違いない。
「これは、あたしだって負けられないレースになりそうだ。」
光里には気づかれないように、そっとつぶやく。
「移動しま〜す。荷物は忘れないようにしてくださぁい。」
役員に声をかけられ、思い思いに持って来た荷物をまとめて役員の後に続く。
ここにいるみんなが、今はあたしにとっての最大のライバル。
他の選手に興味があまり無くても、あたしは心がいつも以上に踊る。
こんな気持ちはきっと初めてだ。
楽しい。
楽しいんだ。


