いちについて、




お互いの勝利の回数で言えば、五分五分だ。


ちょっとの調子の差でどちらが勝つか、いつも違う。


全中はあたしが優勝したけど、昨年の国体の準決勝ではあたしがコンマ一秒差で三位に入ってしまい、タイム順でも報われずに決勝を逃した。


各大学の記録会などに参加した時だって、大学生に負けず劣らずの成績で二位と三位に入り、表彰台にも登った。


それらの成績すべて合わせても、たぶんあたしが勝負に勝った回数と、彼女が勝った回数は同じくらいだと思う。



あたしは、光里の走りが苦手だった。



あの、攻略し尽くした走りに、初めて走った日は戸惑いを隠せずにあっさりと負けていった中二の夏だって覚えてる。



全中の準決勝。



隣のレーンを走った彼女は序盤から抑え気味で、なかなか前に出ようとはしない。


先頭とは差があったにも関わらず余裕そうな顔をしていた気がするから、隣を走っていたあたしの頭は完全に混乱し、途中から誰について行けばいいか分からずに、五着でゴールラインを踏んだ。