いちについて、




予選も、準決勝も、なにも問題はなかった。


自分の走りたいとおりに、着順が全体の二番目になるくらいのスピードで、自分でも想像以上に調子は良く、走りをコントロールできたと言っても過言ではない。


今日、決勝を迎えたあたし。



あたしは昨日、今日の番組編成に驚きを隠せず、これまでなかった不安に襲われ、それをそのまま今日も引きずっていた。



「あんま気にすんなって。前にあいつがいても気になんねえだろ?」



「でもぉ。」



準決勝を控えた泰知と招集所へ向かう時も、あたしは落ち込んで下を向いてしまった顔をあげられない。



「まさか、因縁のライバルと隣同士って、素晴らしいよなぁ。」



「ほんと、その通りだよ。」




全国大会で必ずと言っていいほどに出会う、西園光里(にしぞの ひかり)。


学年は同い年で二年生であるけれど、あたしと同じくらいの実力がある。


中学の頃からあたし達の勝負はスポーツ紙に載るくらいになって、どちらが勝つか、予想する元陸上選手も増えた。