「ここまで来たなら優勝目指すくらい、頑張ろうぜ。」
振り向くと、何かを予感したように笑う泰知の顔がすぐ目の前にあった。
「………あんたに負けない。」
そう言うと、泰知は笑ってあたしの右腕を離す。
扉を開けて、絨毯が敷かれた廊下に出る。
自分の部屋にスペアキーを差し込み、自分の部屋の扉を開けるのと同時に泰知は自分の部屋から顔を出した。
「昇馬のお土産、忘れんなよ?」
「泰知こそ、忘れないでよね?」
「俺は、忘れないから。」
「信じられな。まあ明日ね、おやすみ。」
「おう、夜更かしすんなよ!!」
夜更かしするのはお前だろ、とあたしは心の中で泰知に説教しながらも、表向きは笑顔で頷いた。
たぶん、あたしの今の気持ちに気づいてる。
そんな感じの顔で泰知は顔を引っ込めた。


