いちについて、




「でもさ、面白さだけで勝負ってできる?」



「たまに挫折する。」



「そうだよね。」



しょんぼりとした顔を見せた泰知は少し愛おしく思える。



「でも、それでも面白いから走れるっていう風に考え直せば、立ち直れる。」




やっぱり、泰知らしい。



これが篠沢泰知の走りなんだと考えると、やっぱりこの人を目指して陸上をやってきた意味を見い出せる。



「やっぱり、泰知と陸上してて良かったよ。」




「なんだよ。恥ずかしいなぁ。」


泰知は頬を赤らめて頭を掻いた。



「そういやぁさ、」


気がつけば泰知はいつもの真剣な顔に戻っていた。



陸上のことを話す時の顔だ、とすぐにあたしは理解した。