二人して最近の陸上部について熱く語り合っていれば、
「お前は最初に飛ばす派?最後に飛ばす派?」
泰知はそう聞いてきた。
「え〜、あたしは最後かな。あんまり最初に負担かけたくないから。」
「やっぱりそうだよなぁ。」
泰知はそう言ってベッドに背中からダイブした。
「え、やっぱりって?」
「いや俺さ、いつも最初に飛ばすじゃん?」
「まあ、そうだよね。」
泰知は最初に大きく大量リードを奪い、相手を寄せ付けない。
最終的に差は詰められるが数秒程度。
いつも圧倒的な優勝を誇る。
あたしのように、誰かの後ろについて最後に前に出るなんてやり方をしない。
「前川先生にさ、今回は戦法勝ちだからちゃんと考えて走れよって言われてさ。俺、いつもの走りじゃ勝てないんじゃないかって思って。」
「そうかなぁ。勝てるとは思うけど。」
そんなことを言われていたなんて知らなかった。
いつも前川先生は泰知に対してはいい走りだとしか言わないから。
「じゃあ、泰知はどうして最初に飛ばす走り方をするの?」
「なんでってそりゃあ、最初に飛ばさなきゃ、何も面白くないじゃん。」
面白いとかそうでないとか、走りをそう判断する。
やっぱり泰知らしいと思ってしまう。


