「まあ、あいつだってお前のこと認めてないわけじゃないんだし、いいじゃん?言わせとけば。」
「でも〜〜〜。」
その日の帰り道で泰知と昇馬に嘆いてみれば、二人は楽しそうに笑った。
本当に、二人を慕っていつだって付いてくる犬のような後輩が、あたしにも欲しかったのに、まさかあんなやつがあたしの後輩だなんて。
未だに信じられない。
昇馬が押して歩く自転車は相変わらず、チリチリとゆっくりと音を立てる。
「いいなぁ。俺も全国大会行きたかったなぁ。」
不意に、昇馬が空を見上げてそう言った。
「っ………。」
なんて言えばいいか、分からなかった。
そうなんだ、全国大会に行けるのはあたしと泰知だけで、昇馬はそのチャンスを逃してしまったのだ。
ハードルを跳び違えなければ、昇馬にだってそのチャンスはあったというのに。
「ま、帰ってきた時、俺より三秒後ろを走ってたらぶっ殺すからな?」
「ったりめーだろ。」
肩を組んで馬鹿にしたように言った泰知に、昇馬は自信もって言い返した。
ほんとに、泰知にはやられたと感じた。
誰も彼の言葉では傷つかない。
そんな言葉を、泰知は言うことが出来る。
あたしにはまだまだ出来ない。
あたしは数歩後ろに下がり、二人の楽しそうな姿を眺めるしか術がなかった。