いちについて、




『400mの通過は61秒。この間の200mは32秒。32秒でした。先頭を走るのは種川西高校の古賀さん、次いで山仲高校の黒川さんです。』



普段は絶対に耳に入らないはずの途中経過が今日はよく聞こえ、最初の200mが29秒、次の200mが32秒であることまでしっかり記憶をした。


ここまではいつも通りだ。


もう少し速いと思っていたけれど、400mの入りでだいぶペースが落ち着いて来たことがわかった。


スタート地点を超え、あたし達は二度目のバックストレートまで来る。


相変わらず向かい風だった。


古賀さんが顔を横に少し逸らして走るのに対し、あたしは古賀さんのおかげでなんの障害もなくバックストレートを通過する。


『600mはキーポイントだ。きっと種川西の古賀はお前を想定してロングスパートをかけてくるはずだ。そこで焦ってお前もスパートをかける必要はない。残り100で出し切れ。』



「97!!この間、30で通れてる行けるよ!!」



楓の的確なタイム報告をきっかけに、古賀さんのピッチが少し早くなる。



それと同時に、聞こえてくる呼吸音も大きくなる。


焦るなと言われた先生の言葉を思い出し、あたしは距離を開けないようにまだ余力が残る程度で古賀さんを追いかける。