周りの選手の足音や息遣いが全て近くで聞こえる。
そんな当たり前のことが、とても面白く感じてしまう。
そりゃあ、それぞれの県大会を勝ち抜いて厳しい予選、準決勝を通過してきた選手が集まっているんだ。
誰もが、てっぺんを目指していることに変わりはない。
あたしだって、順位にはあまりこだわらないけれど、泰知に近づくには表彰台のトップに立つ以外の方法を知らない。
矛盾していると言われるかもしれないけど、それでも今だけはトップを狙う。
それ以外に考えなければいけないことはなかった。
「夕夏ぁ!!!200、28秒!!速いかも!」
遠くから、応援の声に混じって楓の声が飛んでくる。
28秒。
速いかもしれない。
でも、走っている感覚はいつも通りだ。
腕の振りにも、足の疲れ具合にも何ひとつ異常はない。
いつも通りだ。
三番目の位置をキープし、600mの通過を気にすればいい。
まだ固まったままの八人の集団は揃ってメインストリートに出る。


