招集所には、見たことある顔がいくつかあった。
その中には、スタートレーンで四レーンを勝ち取った古賀媛(こが えん)の姿もあった。
今年はそこまで結果を出せていなかったらしく、大会で名前すら聞いていなかったけど、このに来てやっと調子を合わせて来たみたいだ。
この選手とは中学からの関わりもあり、ひとつ上の先輩だと言うのに、仲はそれなりに良かった。
「古賀さん。」
顔を覗き込んで声をかけると、古賀さんは白のイヤホンを外しながら微笑む。
「夕夏、久しぶりだね。夕夏が四レーンに入ると思ってたのに。」
古賀さんはあたしを心配するように言う。
「準決勝の走りもイマイチだったし。」
「あ〜、いろいろあったんで……。でも、決勝はちゃんと走りますよ?」
「楽しみにしてるから。」
古賀さんと熱く握手を交わしたところで役員に名前を呼ばれた。
「ゼッケンを見せてください。腰ゼッケンはこれを。」
「ありがとうございます。」
渡された腰ゼッケンを丁寧にユニフォームのパンツに貼り付ける。
もうすぐ、勝負の時が来る。
ここで勝って、泰知にまた一歩、近づいてみせたい。


