「なんなのよアイツ。」
後に残ったのは、どこかへぶつけてしまいたい憤りと、戸惑いを見せる部員だけだった。
「夕夏ぁ。」
ダルそうな声の主はすぐにわかり、振り向くまでもなく何、と答えた。
「お前らしい。」
泰知は後ろからあたしの髪をクシャッと掴み、そのままあたしの正面に姿を現すことなく部室棟の方へ向かった。
「せっかく今日は綺麗に結べたと思ってたのに。」
泰知に掴まれたことによって乱れた髪の毛を、ポケットの中からくしを取り出して直し、再び髪を結んだ。
誰よりもここまでの経過を楽しんでみていたのは、きっと楓だ。
「いい関係になりそうだね、二人共。」
「絶対いやだし、あんなヤツ。」
絶対いやだ。
文句をつけられる度、あたし當山せりかに対する苦手意識が強くなっていった。


