きっと、少しの差こそあれども、みんな最初に思っていた実力はきっと同じなんだ。
それをうまく伸ばせたから、今のあたしがここにいる。
実力だって、天性の力だって、あたしは信じていない。
長距離なんてそうに決まってる。
楓がいい例だ。
楓は小学生の頃は、スポーツクラブの中で下から三番目程だったらしい。
それが、いいコーチに出会っていい仲間に出会っていいライバルに出会って、ここまで来たのだ。
「勝ちたいんだろ?あたしに。実力で勝負ぶっかけて来いよ。いつだってその勝負、受けてやるから。」
一口に言いたいことをすべて吐き出してみれば、意外とせいせいした。
ただ、その相手が後輩であったことに若干の後悔を感じた。
徐々に伏し目がちになっていったせりかは、突然、顔を上げる。
「あなたに、私のやり方を否定されたくない。」
Tシャツを掴んでいた手を解かれる。
滴る汗をそのままに、彼女は部室の方へ行ってしまった。


