「あんたに何がわかるっていうの。」
我ながらよく低い声が出たもんだと感心した。
こんなに低い声で、冷たい目で、誰かのことを睨めるのだと感じた。
「あたしにはなんにも分かりませんよ。あなたみたいな天才には。」
「あんたねぇ!!!!」
「夕夏っ!!」
楓が制するのを避け、あたしはせりかのシャツを掴みあげる。
「結果が練習に比例してないことにそろそろ気づきな?そんなに走ってただ体を壊すようなことして何が楽しいの?それがあんたの陸上なの??」
もう、何かわからない怒りを、あたしは目の前にいるせりかにぶつけた。
きっとこれが本心であるということは周りにいる誰もが理解していたはずだ。
「あたしが天才?持ってるものが違う?バカにすんじゃないよ。たしかに、昔は泰知より速かったよ。でも、持ってるものなんてみんな同じなんだから。伸ばせないのは、あんた自身のせいでしょ?」
これが、陸上をし始めてからあたしが学んだ事だった。


