「今まで、追い込んだことしかないので。」
そういう彼女が、なぜ決勝まで残れなかったのか、あたしは理解した。
1500mを走ったせりかは必ず、決勝の舞台までコマを進めると思っていた。
なのに、呆気なく予選敗退。
どうして、決勝に残れなかったのか。
あたしは今、確実に分かった。
家でも走っている。
手加減するということを知らずに。
何が大切であるかということを忘れて。
追い込めることこそが最大の成長に繋がるとだけ。
「それは違う。」
時計を見つつ、あたしは立ち上がる。
「何が違うって言うんですか!?」
彼女が、あたしに対してあまりいいイメージを持っていないことも、あたしは最初から知っていた。
「あなたみたいな人は、きっと持ってるものが違いすぎるんでしょうね。あたしなんて、到底追いつけやしない。」
その瞬間に、あたしの中で何かがプツリと切れた。
もうそこからは、止められなかった。


