昇馬と並んで帰るのは、随分と久しぶりな気がした。
昇馬は毎日のように部活があるし、あたしは毎日のように陸上部を避けて家路につく。
朝はたまに会うことがあるけれど、こうやってちゃんと並んで家に向かうのは本当に久しぶりの事だった。
だからかもしれない。
何から話していいかわからない。
昇馬も同じことを感じているようで、なかなか会話は始まらず、沈黙だけがあたし達の間に漂う。
「ねえ、昇馬。」
その沈黙を破ったのは、あたしだった。
「ん?」
なにか、言いたいことがあった訳じゃなかった。
だけど、急に昇馬の名前を呼びたくなった。
って、そんな事言ったら、昇馬は笑うかな。
「夕夏?………どした。」
いきなり立ち止まったあたしを見て、昇馬は自転車を止める。
「夕夏?なんで、泣いてんだ?」
「え………」
頬を触れる冷たいものが、涙なんて気が付かなかった。
涙は、温かいものだと思っていたから。
こんなに冷たい涙が、自分の中にあったなんて、知らなかったから……。
どこからか突然に溢れ出してきた涙を、あたしは止めることが出来なかった。
「夕夏…………。」
自転車のストッパーがガチャンと降ろされる音が聞こえる。
それからすぐに、昇馬の暖かい手があたしの頬に触れる。
「なんか、悲しいことでもあったか?」
「わかんない。……わかんない。」
ブンブンと首を横に振る。


