「山仲高校~、山仲高校~。」
係員がコースのほうから呼ぶ声が聞こえる。
さすが、思った通りに一位で襷を運んできてくれてるみたいだ。
今年のほかの学校の成績を見る限り、20秒もたたないうちにあと三校は来るはずだ。
最初に飛ばすか、最後に飛ばすか、そんなの決まっている。
『最初に飛ばさなきゃ、何にも面白くないじゃん。』
泰知の言葉を思い出す。
コースに出ると、人混みの中とは違った新鮮な空気が呼吸をするたびに全身に回る。
もうすでに、最後のカーブを曲がった後輩の當山せりか(とうやま せりか)の姿が見える。
もうすでに限界を超えているはずの表情は心なしか楽しそうだ。


