「夕夏。」
名前を呼ばれて振り向くと、いつの間にか教室の入り口には昇馬が自分のリュックサックを背負って立っていた。
「そろそろ雪降りそうだし、帰ろうぜ。」
「あ………そうだね。」
今年は数年ぶりの記録的豪雪のおかげで、全国各地で久々に雪がたんまりと積もった。
ここも、例外ではない。
海も近いことあって、体の芯まで凍ってしまうほどに寒い日は例年通りにも関わらず、寒い日には決まって雪が降った。
今日も、夕方から雪が降る予報だ。
空はどんよりと陰りが差し、あたしの好きな冬の晴れ空を拝める日はだいぶ少なかった。
昇馬と並んで教室を出ると、廊下はシンと静まり返っていた。
きっと階下では三年生が年明けにあるセンター試験のための課外に必死になっているはず。
廊下を歩く足音には、細心の注意を払ってしまう。


