きっと、一番に自分を待ってくれているはずの場所なのに。
何かにせき止められているあたしは、前に進めていない。
「寒いし、そろそろ帰んねぇ?」
「ん、そうだね。」
昇馬は立ち上がり、扉の方へと向かう。
あたしはその背中を追う。
重い扉をギギギと音を立てて開けてから、昇馬は動きを止めた。
「なぁ。」
どこか遠慮したような言い方が、あたしの背筋を伸ばす。
「うん。」
「泰知のこと、どう思ってた?」
「えっ?」
昇馬はあたしのことを見ずに、先にある階段を見つめたままあたしにそう言う。
「手紙のこと。」
「どうって……なんとも、思ってなかった。」
「そっか。………ごめん、変なこと聞いて。」
昇馬は止めていた体を再び動かし、屋上から出ようとする。
「待って。」
あたしはその後を追って、昇馬の左腕を掴んだ。
後ろで扉が大きな音を立てて閉じる。
屋上に出ていたことがバレたら生活指導の先生に叱られるだろうななんて思考、今のあたしには微塵もなかった。


