「ゼッケンとユニフォームの確認をします。」
係員に言われ、着ていたウィンドブレーカーのチャックを下まで下げる。
「よし、おっけいです。」
確認が終わると、係員は手に持っていた冊子に何かを書いた。
その動作を見ながら、あたしは下まで下げたチャックを再び上まで上げる。
そういえば.....。
二年ほど前に泰知に言われたことを思い出した。
『お前、チャック全閉めなんてダサくね?いつまでそれやってんの』
バカにしたようにあたしのチャックを指さして笑っていた。
「寒いんだもん。」
誰に言うでもなく、もし言うならばあの日の泰知に向かって、呟きながらチャックをきちんと上まで閉めた。
「夕夏!!靴!!!」
そこに、あたしの濃いピンク色のシューズ入れを持った楓が走ってきた。
「楓、足は.....。」
「あんたが靴忘れるほうがよほどやばいから。」


