(十四) ハッピーバースディ

藍色の空の中、
白いぼたん雪がちらつきはじめた。

やわらかいそのかたまりは、
静かに地面に舞い降りて、
しろく地面を覆いはじめる。

ぼくと日向は、
ミカが目覚める前にそっと家を出て、
マンションの非常階段の踊り場にいた。

「ミカ、どうなるんだろうね」

「子供の心は柔軟だ。
今は悲しみに縮んでしまっていても、
すぐに溶け出すだろうよ」

「でも、
おじさんとおばさんがあのままだったら?」

そうではないことを願いながら、
言ってみた。

日向が、
たま~にのぞかせる
あの優しい目をして言った。

「そうはならんだろ。
強情そうには見えたが、
ミカを見る目は本物じゃった」

「うん」