ミカが冷蔵庫を指差す。
その仕草に、ぼくはなんだか悲しくなった。

きっといつもこうなんだ。
食べるものはいつも冷蔵庫の中。
温めるのも、テーブルに並べるのもいつも一人。

会話をする相手もなく、
テレビを相手になんとなく口へ運ぶ。
きっと、どんなごちそうだっておいしくないに違いない。
食欲だってなくなるってもんだよな。

そうだっ!

「ほれ、ミカ。一足早い誕生日プレゼントだ」

たった今置いたばかりの風呂敷き包みを指さして、
ぼくが言うと、

「何?」

とミカは、
不思議そうな表情で見返してきた。

本当に、
こういうことに慣れてないんだと分かる目をして。

「腹へってんだろ、食えよ。
おかかばっかりで悪いけどさ」

ことのなりゆきに納得したらしいミカは、
一瞬、風邪なんか治ったんじゃないかと思うように、
顔を輝かせた。
次にきつくしばった風呂敷きをほどいて、
山と積まれたおにぎりに手をのばす。

「これ……食べてもいいの?」

「ああ、味の保証はできないけどな」

「ありがとう!」

ミカは、
まるでおやつを前にした子供みたいに
無邪気な顔をして、握り飯にとびついた。