(六) 孤独 

離れた目と、額よりも低い鼻。

どうみてもカワイイとは言いがたい。
けれどもミカには、
何より愛らしく見えるらしく、
うっとりと目を細めて、
その豊かな長毛をなでまわしていた。

「あのさぁ」

ぼくは、
明らかにその場の雰囲気に水をさす言葉を、
うっかり吐いてしまった。

「このマンション、ペット禁止なんだけど」

案の定、ミカはきっと目を吊り上げた。

「いいじゃない、おじいちゃんの忘れ形見なんだから」

「おじいちゃんの?」

昨日言ってたあのおじいちゃんかな。

ミカの瞳に、
みるみる寂しげな影がさし、
ぼくは、失言をちょっぴり後悔した。

「おじいちゃんはね、私が五歳の時に死んじゃったの。
その頃からパパもママも忙しかったから、
私はいつもおじいちゃんの家にあずけられてて……。
新聞や、割り箸を使っていろんな物をつくってくれた。
輪投げの道具や、クリスマスツリー」

「何で死んじゃったの?」

「病気で。すごく哀しかった。
一生分の涙を使い果たしたと思ったぐらい泣いたわ。
この子はおじいちゃんがまだ元気だったころ、
一緒に知り合いの人の家にもらいに行ったの。
まだ生まれたばかりの頃にね」

「そうなんだ……」

ということは、
こいつかなり年寄りだな。
と関係ないことを一瞬考えてしまうぼく。

でも……

だったら、
ここにネコを飼ってる人がいます、
なんて死んでも言わないでおいてやろう、
とぼくは心に誓った。