(五) 謎のピエロ

すっかり演出にはまってびびるぼくを、
面白ろがるように見上げるミカ。

何なんだよ、こいつは。
ホラー映画の見すぎだ、絶対。

でも、今から聞く話は、つくり話じゃない。
ちゃかしてはいても、
ミカは真剣に悩んでるんだ。

そう思ったら、
ホラー映画とは一味違う恐怖を感じるというもんだ。

ぼくは、
しり込みしそうになる心の内を
悟られないように気にしつつ、
ミカの言葉に相槌をうった。

つまりはこういうことだった。

最近、ピエロの面をかぶった男が、
ミカの夢に毎晩出てくるらしい。
そいつはいつも手招きして言う。

「こっちへおいで」

ピエロっていうのは、
サーカスとか、何かのイベントで
風船をいっぱい持って歩いている姿は
なかなか愛嬌者だが、
意味もなく一人で突っ立っている姿は、
はっきり言って不気味だ。

怯えたミカが逃げようとすると、
ピエロはしつこく追いかけてくる。

「こっちへおいで……こっちへおいで」