我が家の倍はあるんじゃないかと思うほどのゆとりの空間に、
ぼくは思わずため息をもらした。

あらゆる物が、
まとまりなくごちゃごちゃと置かれて、
常に狭苦しいうちとは大違いだ。

ミカは、
触っただけでも怒られそうなソファに、
いともさりげなく腰をおろした。

「ハルキくんも座れば?」

「うん」

はじめて都会に出てきた田舎の人みたいに、
ぼくは、何だか落ち着かない。

「モデルルームみたいだな」

「そう?」
 
関心するぼくに、
ミカは、さして関心なさそうに言った。

慣れるとたいしたことではないらしい。

ぼくは、
百円のアイスクリームを一つミカに渡しながら言った。

「ぼくの家とはえらい違いだ。いいなぁ」

「何がいいの?」

ミカの言葉は、
どこか苛立ったような響きがあった。

「こんな部屋……つまんないよ。いつも一人だし」

「一人って?」

「パパは出張ばっかりで
ぜんぜん家にいないし、
ママはいっつも仕事で
帰るのは毎日夜中」

「昨日は三人でいたじゃん」

ミカは、フゥ、
っとどこか寂しそうなため息をついた。

「あの日は特別。
三人でどこかへ出かけるなんて、
一年に一度のあの日だけ。
私の誕生日も、クリスマスも、
お正月もうちには関係ないの。
プレゼントももらったことないし」

「え?プレゼントもらったことないの?」

こんな金持ちそうな家なのに?