その日の午後、ぼくは、
今度は昼食の材料を買いに行かされた。

母さんは、部屋の掃除で忙しいんだとか。
年末の大掃除を一度にやるのは大変だから今からやっとくのよ、
とか何とか言いながら、
ぼくをこき使う口実を見つけたことに大満足の顔だ。

ぼくの見るところ、
母さんは、掃除よりも、
コーヒーや、ごろ寝タイムで忙しいらしい。

「まったく」

白い息を撒き散らしながら、
ぼくは何度も一人で愚痴をこぼした。
「休みが台無しだよ」
 
べつに、冬休みになったからといって
すぐにやることが見つかるほど
計画的な性格じゃないけれど、
こうこき使われちゃぁどうしたって損した気分になる。

「なら今から学校へ行くか?」

ぼくの愚痴に応えるように、
誰かがタイミングよく合いの手を入れた。

「そうだな、学校のほうがまだましかもな。え?」

ぼくはあわてて振り向いた。

見渡してみても誰もいない。

でも今の声……気味が悪いくせに妙に親しみのあるだみ声。
そのとき、
歩道わきに、マンションと同じレンガで建てられた
ごみ置き場のかげで、
ガサゴソと人の動く気配がした。