「おい、待てよ」

あわててレジを済ませ、ぼくは、ミカを追った。

「何かあったのか?」

ミカが一瞬足をとめた。

「べつに……何でもないって言ってるじゃない」

「でも……」

ミカの反応は、どこまでも素っ気なく、
また早足で去っていく。そして、それを追うぼく。

「べつにじゃないだろう、最近変だぞ、お前」

ミカがまた足をとめてうつむいた。

のぞきこむぼくの視線をさけるように、
生気のない瞳は、ただ地面だけを見つめていた。

その思いつめた表情に、ぼくは一瞬怖くなった。

正体は見えないのに、確実に存在する何か。

ぼくの心の中に、墨汁のような黒いしみがいってき落ちた。