咄嗟にうつむいた目の下にはくまが広がり、
肌には白い粉までふいている。

白いというよりは、青いといった方がいい顔色だ。

長いまつ毛の影になった瞳からは、
いつものミカらしい光がきえていた。

寝起きのせいかもしれない、
そう思おうとしたけれど、
ミカの反応にそれも打ち砕かれた。

「何でもない」

愛想わるい返事を残して、
さっさと本を棚に戻して
立ち去ろうとしたミカの腕に手をのばす。

ミカは、あっさりとぼくの腕を振りはらって、
ふり向きもせずに店を出て行った。