どうして?
何が悪かったの?
話し合おう……?
言いたいことは山ほどあるのに怜くんのその言葉で私の言葉は全て奪われた。
重い女は……嫌い。
ここで追及すればそのレッテルを貼られる……
「……分かった……」
それは嫌だった。
だから言いたいこと全部我慢してそれだけ言った。
怜くんはじゃあ、と。
それだけ言って先を行く。
その時見えた。
怜くんの鞄にはもう……あのキーホルダーは無かった。
その事実に私の視界はボヤけていく。
「なんで……なんで……っ」
私の鞄には未練がましくまだ付いている新品のピンクのキーホルダー……そして……
鞄の中には怜くんに渡すはずだった水色のクマのキーホルダー。
どうしてこんなことになったの……?
どうしてこんな別れ方を突き付けられてもまだ……
こんなにあなたが好きだって……
あなたが欲しいと……
心が渇望しているのだろうか…────────
*
「……嘘……っ。
キーホルダー……なくなってる……」
怜くんから別れを突き付けられて2日経った。
その噂はあっという間に広まり、周囲はフリーになった怜くんへのアプローチ合戦が始まっていた。
もともとクラスは違うから怜くんと会うことは頻繁になかった。
ただ……
移動教室でたまに見かけるけれど……
私なんかこれっぽっちも視界に入らない。
話なんかも到底出来ない。
「……忘れろってことなんだよねー……」
そして今、帰ろうと思って鞄を見て愕然。
ついていたはずのクマのキーホルダーはどこかで落としたのか無くなっていた。
怜くんとはクラスが違うからつけていてもいいかな……なんて未練タラタラ。
おまけに水色のクマのキーホルダーは今この鞄にそれはそれは大切に入っている。
……うん。
気持ち悪過ぎる……
重た過ぎる……。



