言葉を区切った怜くんが鞄から取り出したのはなんと水色のあのキーホルダーだった。
「告白した時の言葉は嘘じゃなかった。
本気で大切にしたかった。
でも……自分を偽る度に苦しくなって……」
「……うん……」
「何一つ嘘なく接してくれる杏奈から目を背けた……。
自分に自信が無くなっていったから……」
私は今、怜くんの不器用な言葉の1つ1つを大切に受け止めた。
これが……やっと知ることのできた彼の本当の気持ち。
「それで杏奈を傷付けたって分かってても自分を守った……」
「いいよ、それでも。
だって怜くんが……辛い思い出があったのにこれを持っててくれた。
それだけで……充分だよ」
そして私も……自分の鞄から怜くんに渡すはずだった水色のクマのキーホルダーを取り出した。
「それ……っ」
「……あたしも、ごめんね。
実はピンクの方を落としたみたいで……。
これ……怜くんが落としたって言ってたから渡すはずだったもの……なんだけど……」
怜くんはちょっぴり困ったような、でも嬉しいという顔で笑ってくれた。
これで完璧なお揃いになったわけで。
「もういっかい付けよっか」
「そうだね」
2人の通学鞄に付けられて揺れる水色のクマのキーホルダー。
いつまでもこうして……
怜くんの隣にいたい。
あなたが欲しい。
笑う時も。
泣く時も。
迷う時も。
願う時も。
まだまだ思い出は多いなんて言えない2人だけれど……。
「じゃあ怜くん。
帰ろっか?」
「はは。珍しいね。
杏奈から手を出してくれるなんて」
「怜くんに……あっためてほしい……です」
「もう……本当に……っ。
いつからそんな甘え上手になったの?」
「そ、そんなつもりないよ……!
ほら帰る、帰る……!」
ここから踏み出すまだ見ぬ怜くんとの未来は……
私自身の手で描いていくんだ…────────
【END】



