「……あのキーホルダーも……
誰かに譲るか……それとも処分かぁ……」
すぐに出来るかは分からないけど。
とりあえず帰りながら考える、かぁ。
そんなことを考えながら下駄箱まで来たときだった……
「ねーぇ、怜!
聞いたよ~?
彼女と別れて今フリーなんだって?」
「……何か用ですか、谷口先輩」
「……嘘でしょぉ……」
なんと私の下駄箱の裏側の列にどうやら怜くんがいるらしい。
怜くんに声を掛けたのは1つ上の谷口先輩。
めちゃくちゃ可愛いというかセクシー? エロい?
あと、めちゃくちゃ遊んでるらしい。
重たい女が苦手なら……
怜くんは谷口先輩のような人が……お似合いだ。
「……ど、どうしたらいいのー……」
これ付き合うパターンだよね?
カップル成立の瞬間をここで聞いていろと!?
帰るにも見つかるだろうから出来ないし……
息を潜めて下駄箱と一体化。
「フリーならあたしと遊ばない?」
……すごいな。
こんなことサラッと言えないわ。
怜くん……きっとオッケーするんだろうなぁ……。
私もハニートラップ的なもんが出来る技術があったなら愛想を尽かされなかったかな……
「いや、遠慮しときます。
そんな気分にならないんで、今は」
「えぇー、珍しー?
なに、彼女のこと振っといて未練あったりぃー?」
……うーん……
谷口先輩たぶんそれは無いですよ。
あんだけ手酷く振られたんでね、一応。
と、心の中で会話する。
「オレには勿体無いだけです。
ああいう子は……オレが汚しそうで……嫌なんですよ」
……汚しそう?
どうしてそんな言い方するの?
怜くんはそんな人じゃないよ……。
「なるほどねぇ。
噂では聞いてるよ、怜の家のこととか」
「そう……ですか」
「まぁ分からなくもないけど。
親から愛情貰えなかったり、親がいないとどうしても歪になりがちだし」
怜くんは……どんな家庭で育ったんだろう……
気付けば私は2人の会話に夢中で聞き耳を立てていた。



