俺はその言葉を聞いて思わず笑みがこぼれた





そうか




感覚だけは覚えてくれてるんだ






思い出は消えてしまうと思っていた




けど、俺との感覚を覚えてくれてるなんて





こんなに幸せなことはないだろうな





俺は来那をもっと強く抱きしめる




「来那、この感覚忘れるなよー??」



俺は来那にとびきりの笑顔を見せてあげた




すると来那は




「うん!“絶対に忘れないよ!”」



来那はドライヤーを止めてこちらに体を向ける




「来那、好きだよ」




「私も」




俺は来那に顔を近づける




来那もゆっくり目を閉じる







唇を重ねると同時に来那からお風呂上がりのいい香りがする




あぁー







俺は今、世界一幸せなんだな





そう思うと華奢な来那の肩を掴んでゆっくり体を離す



きょとんとする来那だったが




「ほら、乾かしな?」





と俺が言うと



来那はニコッと笑い



俺の頬にキスをする




そしてまたドライヤーで髪を乾かし始めた





「もしもの話だけどさ」




と、来那は俺の方を向く



「……ん?」



「私ね、医者の人に記憶障害が
良くなるかはわからないけど
悪くなることはないって言われたのね」



「……そうなの?」



悪くなることはない



それだけでも安心出来る




むしろ良くなるかはわからないって事はもしかしたら良くなるかもしれないってことだよな?



来那は話を続ける




「もし、りつのこと完全に忘れちゃっても
ずっと一緒にいてくれる?」



来那は真剣な眼差しで俺の目を見る




だから俺もそれと同じくらい真剣に返す






「当たり前じゃん、
来那から離れるなんて考えられないよ」





「何それ……嬉しい」





来那は小さな声でそう言って微笑んだ




「りつがいてくれれば幸せだよ
もし、そうなってもずっと一緒にいてくれればいいよ
“理由とか、言葉はいらない
ただ一緒に居てくれるだけでいいの”」




来那の言葉一つ一つが




俺の心をまた柔らかく包み込む




来那が俺を忘れようが忘れまいが



ずっと一緒に居よう!!