3年前君は死にました。
私の前からもこの世からも君は消えました。
もう何をしたって君にこの声は届かない。
どんなに君の顔が見たくたってみることができない。写真嫌いな君は死んでしまった後に面影すら残してくれない。君の顔この先ずっと覚えて行けるかな。忘れるわけないけど忘れてしまうのかもしれなくてとても恐い。この先、生きていくことも。
私の名前は 柚木花乃 親は私が5歳の時に事故でしんでしまって祖父母に育てられました。君と初めて出会ったのは7歳の時。隣に越して来た君は少し元気がなかったね。初めまして、君の名前は?と尋ねると
顔を赤らめた君は震えた声で 飛田そら と言ってくれた。最初はおはようと声をかけても頷くだけの君は
どこか寂しげでやっぱり元気がない。でも、日に日に君は私に心を開いてくれた。「花乃!明日一緒に駄菓子屋にいこうよ!」学校帰りに君と何気ない話をして平凡に帰るそんな日常があるだけで温かかった。子供の頃は夢がいっぱいでいろんな話をしたね。近くの公園で長く生えた草を少しずつ踏んで秘密基地をつくったり高い木に登ったり君といるだけで夢が溢れた。でもそんな夢はそう長く続かない。小学校高学年になると男友達とサッカーを始めた君はあまり遊んでくれなくなった。隣の家だけど会うことも少なくなったね。学校の登下校は7、8歩前を友達と歩く君。たまに一緒に帰ってくれる日は私の特別な日。カレンダーに印をつけて君との思い出を書き留めた。ある日、君が私に聞いた「なぁ、花乃?」 「ん?」「お前、友達いねぇのか?」君と遊んできたせいか私はあまり女の子と気があわない。でもそんなこと知ってほしくないし、
「いるよ!今日も遊ぶ約束してるし!」初めて君に嘘をついた。もうこの頃には夢なんてどこにもなかった。中学生に上がると、もっと君と会える日は少なくなった。お互いサッカー部とバレー部に入って部活の日々で口数もへった。中学生にはいって初めての冬、祖父が死んだ。心臓の病気で発作が起きて倒れそのまま目を覚まさなかった。なんだろう、とても悲しいのに涙がでない。居て当たり前の存在だったから実感がわかない。祖父の死に顔は寝ているようにしか見えない。葬式には君もいた。でもそんな事を考えてる暇はなかった。祖母はとても泣いていて、小さい小さい体を私はずっとさすっていた。火葬の前に祖父の顔をもう一度見た。肌を触るととても冷たかった。あぁ、本当に死んだんだ。これからどうなるのかな。いつも部活から帰ると「はな、おかえり」その当たり前の言葉
もう聞くことはないんだな。強がりな私は、ぐっと
唇を噛んで感情を抑えた。そらの親が私に言った。
「花乃ちゃん、なんでも頼っていいからね」越してきた頃からそらの親はとても優しくて、私の祖父母も優しかったがやっぱりなにか違いを感じた。葬式が終わりみんな帰っていく、祖母はそらの親と先に家に戻った。祖母も体が弱いのでいつ倒れてしまうのか心配だ。私はふと小さい頃よく遊んだ公園に訪れた。あの頃はあんなに伸びきっていた草が綺麗にかられてる。
この広場でよく祖父と遊んだな。そらとも遊んだ。たくさん思い出が詰まってる。そんな事を考えてると涙が溢れた。もうもどることのない時間。現実が私に深く刺さる。ダメだ。涙が止まらない。今まで我慢してきた分いろんな思いが立ち込めた。その時、誰かが私の頭を優しくて撫でた。振り返るとそこにそらがいた。君は「我慢しなくていいんだよ。どんなことだって」そらは私を見てくれていた。いつも祖父母の事を考え遠慮がちな私は、あまりわがままを言わないようにしていた。「泣きないだけ泣けばいいよ」そういってそらは私の頭を自分の胸元によせて優しくて抱きしめてくれた。君の腕の中は温かくて安心した。
何日かたって祖母は入院することになった。祖父の死と疲労が重なって体調をくずしたのだ。そらの親はうちにおいでっといっていたけど何かあった時にだけ頼りますといって誘いを断った。これから先いろんなことがあるのにこのくらいでへこたれていられない。家でテレビを見ていたらインターホンがなった。そらだ。「よ、母さんが持ってけって」私はタッパを受け取った。中を見ると肉じゃががたくさんはいってた。
「ありがとう」というと「うちに食いにくればいいのに」と優しい一言をかけてくれた。「じゃあ、今度おじゃまさせてもらうね!」「おう!」といってそらはかえっていった。もう少し話したかったな、なんかそらといると安心する気がする。祖母が入院して2週間がたった頃、私はそらが告白されている場に居合わせた。そらは少し照れくさそうにしていて、なんかもやっとした気持ちがした。後で聞いて見たらそらも少し気になっていたらしい。それを聞いて私の心の中に何かぽっかりと穴が空いた。その子は意外と家が近くて帰り道に一緒に帰っているのをよく見る。なんでだろう。どうしてこんなに変な気持ちがするの?幼馴染の恋って応援したくなるはずなのに私の気持ちは嫌な方に近い。そらが笑ってる。2人から見えない距離で薄暗い道を歩く。私も恋とかしたら変わるのかな。私は今でもあまり人とうまく関わらない。昔はあんなに楽観的だったんだけどな。家帰ったら何をしよう。そら今日も何か届けにきてくれないかな。って、あれ、どうして今そらがでてきたんだろう。そういえばふと気がつくとそらのことよく考えてたな。それからまた何日か日が経った。相変わらず帰り道の前にはそらがあるいている。もう1人でご飯を食べるのも慣れた頃、またそらは家を訪ねてきた。今回は魚の煮付けをもらった。「ありがとう」もうそらには彼女もいるし、あまり話さない方がいいよねいくら幼なじみだからって。だからドアを閉めようとした。すると、ガシッと
ドアを閉めるのをおさえられ「なんか最近、元気ねーのな?」と心配そうな顔で私を見る。「そうかな?いつも通りだよ」私は君にいくつ嘘をついたかな。君には心配かけたくないから。いつも笑ってその場を濁す。

「気分はどう?」久しぶりに私は祖母にあった。少し痩せたみたい。もともと小柄で細いのにさらに細くなってる。「柚木さんのお孫さんですか?」と医者らしき人に尋ねられた。「少しお話が、、」何か陰湿な空気が流れた。「おばあさんのことなのですけど、1ヶ月たっても改善の兆しが見られません。辛いでしょうが、少しその事を知っといてもらいたいです。もってあと2週間というところでしょうか。」こんなに祖母との別れが早いとは思わなかった。私が社会人になったらたくさん親孝行をしようって思ってたのに。たくさん苦労をかけてごめんなさいおばあちゃん。その事を私は一応そらの親に伝えた。すると、気をつけて帰ってね、と言葉をくれた。もう夜の7時だ、さすがにくらいな。深刻な事実をしった後の帰り道はとても重苦しくていろんな事を考えた。私、おばあちゃんもいなくなったらどうしよう。親戚もいないし、1人で暮らすのかな。これから、ずっと。あれ。どうして涙が出てくるのかな。今だって1人なのに。その時の私はきっと、この世から私を本当に思ってくれる人がいなくなることが寂しかったのだろう。私は止まらない涙を拭きながら思い出の公園を横切った。「花乃?」聞いたことのある声だ。その方に目をやると、そらとそらの彼女がそこにいた。「どうしたんだ?」そらが私に問いかける。あ、私泣いてるんだった。こんな所見られたくなかった。彼女もいるのに。たまらず私は、その場所から走って家に帰った。「おい!待てよ!」
そらの声が聞こえる。なんで涙が止まらないの?あの2人をみたら涙がより一層でてきてしょうがない。ああ私、きっと、そらの事を好きなのかもしれない。そんな事、今更きづいたって遅いのに。すると「おい!まてよ!」とそらが私の手を引いた。「なんかあったのか?」「なんでもないよ、大丈夫。」いいから、ほっといてほしい。「なんでもなくないだろ!」だめだ。そらに何か言われるたび、今の状況に、自分にはらがたってしょうがない。「なんでもないって!ほっといて!」そらの手を振り切って家の中に入った。
私はそのまま疲れて寝てしまった。そして朝、誰かがうちのインターホンをならす。きっとそらだ。でも今は会いたくない。こんな顔じゃ、しかも昨日のことだって。しばらくするとそらはいなくなった。今日は学校はやすもう。少し疲れたな。午後6時くらいになってコンビニに行こうと私は家をでた。すると「サボりかよっ」と後ろから声が聞こえた。「朝も返事ねーしさ!」少し怒ってる。「ごめん。」というと、その場が沈黙した。「もう彼女はかえったの?」と聞くと、
「ん?ああ」っとそっけない返事をされた。その場から立ち去ろうとすると「花乃、」とまたそらがわたしを呼び止めた。「俺の方こそごめん。母さんから聞いたよ。気づいてやらなくてごめん。」なんでそらが謝るんだろう。何も悪くないのに。「いや、私の方こそごめんだよ。あの時は少し余裕がなかっただけだから、じゃあね、」はやくここから逃げ出したい。「明日は学校くるよな?」「うん。」「そっか!また明日な!」そら、きみはいつも優しいね。もっと早く気付けばよかった。それから2週間がたった。祖母の寿命は続かなかった。火葬の所へ運ばれる祖母から私は目を話すことができなかった。おばあちゃん。今までありがとう。何日かたって私に1つの電話がきた。祖父に兄がいたらしい。初耳だか私はそっちに越すことになった。ここからとても遠い場所らしい。その時わたしの脳裏によぎったのは、これからそらに会うことができなくなるということだ。うちは借家だから家を出たら帰るところはない。ここに戻る理由がない。本当に面白い人生だ。越す日も急で明後日にはでなきゃいけない。わたしはそらの親にそれを伝えたが、そらには言わないでほしいと頼んだ。きっと辛くてしょうがない。だったら何も言わずにいなくなりたい。だからわたしは一通の手紙を書いた。ながながと気持ちを伝えるのは苦手だ。だから、私は「いままでずっと君をみていました。大好きでした。ありがとう。」そう書き残して私は家をでた。最後に思い出の公園に立ち寄った。綺麗にかられた草をみて「もう、秘密基地作れないね」と微笑みながら涙を流した。もうわたしの世界には君はいない、言い返すとなにも言わず居なくなったのはわたしの方だったね。君はわたしの心の中で静かに消えていくのでしょうか。