少し体を離し、先生の顔を確認すれば。


「寝てる……」


なんだ。


寝ぼけてたんだ。





それにしたって、寝顔までこんなに整った人って存在するのね。


あれからもう3年も経つというのに、先生はあの時と何ら変わっていない。


ふいに愛しさが込み上げてくる。


衝動のまま先生の頬にそっと触れると、先生の長い睫毛がピクリと揺れた。



昨夜は、この綺麗な顔が、切な気に、苦しそうに歪むのを確かに見た。


あれは、夢じゃない。


夢のように朧気だけど、夢じゃない。


離ればなれだった時間を埋めるように、お互いの存在を確かめ合うように抱き合った。


先生の熱が。


先生の瞳が。


先生の唇から漏れる熱い吐息が。



確かに先生は存在するって。


先生は生きてるって。


そう私に伝えてくれた。



夢じゃない。


夢なんかじゃない。


先生は今、ここにいる。



「……なに泣いてんだよ」



ゆっくりと閉じられていたまぶたが開いて、先生の瞳に涙を浮かべた私が映し出される。