教師としての念願の夢を叶え、私生活でも相変わらず幸せ、か。
笑顔を絶やさない翠だが、それが強がりだというのは容易く分かった。
キチンと想いを伝えないままの失恋は消化するまでにすごく時間がかかる。
忘れたいと願っても。
伝えたいと思っても。
結果が見えている恋は結局自分で区切りをつける他ない。
「……いくぞ、翠」
「え……ちょちょ!
魁人待っ……」
頃合いを見て翠の手を取り、その場を離れる。
……いちいち自分が傷付くようなことばっか聞きやがって……。
「急に手引っ張っていかないでよっ。
ビックリしたー……」
「……」
「……魁人?
どこ行くわけ?」
「……ゲーセン」
「えぇー」
不服そうな翠にはお構い無しでゲーセンに連れ込む。
「意外とスカッとするもんだぜ?」
「本当ー?」
と、最初は恐る恐るだった翠だが色々と連れて回るうちに少しずつ表情は明るくなっていった。
「あれ面白かったねー?
パンチするやつ!」
「機械壊す一歩手前だったけどな」
「にしてもゲーセンなんて久しぶりだったなぁー。
楽しかったよ、ありがとう魁人」
「倍にして返せよー」
「ゲスいなぁ」
何やかんやで楽しんでいた翠を連れて、オレだけが知っている誰も連れてきたことのない場所へ翠を連れていった。
「というか次はここ……?」
「あぁ。
今までに誰も連れてきたこと無い場所」
「この場所が……」
「まぁ見てろよ」
橙色と朱色が混じり合う空に沈んでいく夕陽。



