〝何が足りていないんだろう〟
一緒に話していて、ずっと気になっていた。
その事は、あの子に出会ったことで、すぐに分かった。
｢あの子、草薙くんの知り合い？
ずっとこっちを見てるけど...｣
私が指さした方向を見た彼は、驚いた顔をしてすぐ、満ち足りた表情をした。
その顔は一瞬だけだった。
すぐに、なにか怒るような顔をした。
けど、私は彼のあの一瞬の顔をずっと忘れない。
会えたことに、心の底から喜んだ顔。
すごく、嬉しそうで。
彼のことを、好きになりかけていた私の心を笑顔一つで無くしてしまった。
彼の一番は彼女なんだなって。
彼女が、永久にずっと、一番なんだなって。
そう、思ってしまった。
彼女が倒れてしまったあとの草薙くんは、とても動転していて、すごい速さで彼女の方へ向かった。
