私と春川先生が話すようになったのは丁度一年前の頃。

春川先生は黒髪の女性がタイプというのを耳に挟んだ私が、髪を真っ黒にして思い切って春川先生に見せに行ったことが始まりだ。

その日の私は勇気を振り絞って、職員室のドアを開け

「雲雀ユズです、春川先生おられますか?」

そう言葉を発した時には、机に向かっている春川先生の背中が私の目にはうつっていた。

私の声に気がついた春川先生はドアの方向に向かって、優しく私に声をかけた。

「雲雀か、珍しいな。どうした?」

授業の話題でもなく、プリントの提出でもなく黒く染めた髪を見せにくるだなんて、厚かましいだろうか、けれど、話してみたかった。近づいてみたくて染めた髪の毛を見て欲しくて、冷たい反応をされるのを承知で思い切って伝える。

「髪の毛、染めたんです、、、。くっ、、黒に!!」

思い切りすぎたのか心なしか声が大きくなる。春川先生は目を丸くして一瞬止まった。
まさかそんか報告をされるとは思っていなかったようだ、しかもこんなクラスで1番目立たないような私が言いだすのだから、誰でも驚くだろう。

春川先生は一瞬止まってその後、微笑みながら

「可愛い」

と言って職員室に入っていった。

私は何が起こったのかわからず、その場に固まってしまった。
女生徒に冷たいあの春川先生が、可愛いと。
こんな私に可愛いと言ったのだ。

こんなことがあろうか?いや、聞き間違いかもしれない。いや、聞き間違えだ。


なんとか心の整理をして廊下を歩き出した。
まだ心臓がトクトクしてる。

これが私と春川先生の話すようになったきっかけだった。