2016年、東京。
23歳になったある時、ある男と出逢った。45歳、バングラデシュ人。インドでお世話になった知り合いが数十年前から関わっている友人だ。身長は私と少ししか変わらないが、ガタイが良い。なぜかわからないが、はっきりした存在感がある。彼の名前はモーシン。私は、彼のことを密かに『海賊』と名付けた。

モーシンは貿易商であり経営者であり、世界中どこに行っても取引先を開拓してくる。億単位の契約にしてくる。その存在感に惚れてしまった。性格はピカイチ悪い。

「俺はわがままだ。俺がわがまま放題できる人しかいらない」と言う。性格を直す気は無いらしい。

その強引さに惚れた。惚れすぎて、スムーズに一つになれてしまう。全身がしびれ続け、そばにいる限り一つになれる瞬間をいつまでも求めてしまう。泥沼にはまってしまうというのはこういうところからなのだろう。

出逢った頃、数ヶ月は疑い信じながらお互いを求め続け、現実を知った後の数ヶ月は毎回出会うたびに情熱と喧嘩の衝動を繰り返し、知り合ってから1年経つ頃になるとお互いの人生を邪魔しないけれど、定期的に会うという関係になった。決して理解し逢えない二人、だけどふと我に帰ると互いを求めてしまう、そんな関係が続いた。