「そんなに憂鬱そうな顔しないでさ、笑おうよ。ね?」
「…別に憂鬱じゃない。そんな事より話しかけないで欲しいのだけど」

話しかけないで欲しい、と言われてもなおニコニコと笑う姿を見て、反吐が出そうになる。
__城山要。同じクラスの彼は、暇さえあれば私の表情をからかうように尋ねてくる。
「憂鬱そうな顔しないで、笑いなよ」と。

要はいつもニコニコとしていて、めったに怒ることがない。…というより、怒った姿を見たことがない。
クラスの中心とまではいかないが、皆のムードメーカー的な役割を果たしている。


対して私は、クラスから忘れられた存在だ。友人と呼べる友人はおらず、それを心配した先生の手により、席替えをしても毎回後ろの一人席に当たる。

自分で言うのも何だが、私は小さい頃からあまり感情を顔に出すのが得意な方ではない。
小学生の時友人だった女の子には、「笑わなくて怖い!」と怯えられ泣かせてしまい、家まで謝りに行くことになった。のちに誤解は解けたものの、それは私の一生もののトラウマだ。

元々得意でないことを「やれ」と言われてもそれは無理なもので、私はこのまま無感情で誰とも接さずに生きていくつもりだった。

「城山要」という人物と、知り合うまでは。