「…未。夏未」

「っ!先生!」





目の前には大好きな先生の姿。


だけど近付けない。

足が、前に進もうとしてるのにその場を足踏みしているだけ。





「何で?!
どうして先生のところに行けないの…?」

「夏未はまだこっちに来ちゃいけないよ」

「そんな!」

「夏未にはちゃんと人生を全うしてほしいんだよ。幸せになってほしいの」





先生がいなくちゃ幸せになれないよ…





「…生きてる意味なんてないよ。
先生いないんだもん、寂しい」

「そんなことないよ。
これから夏未はたくさんの人と出会って、恋をして、僕のことなんか忘れて幸せになるんだ」

「忘れられるわけない!
先生のこと…こんなに好きなんだから…」

「それじゃあ、証明して。
もし夏未がおばあちゃんになっても僕のことを好きでいてくれたら迎えに行くよ。
だからそれまでは…ちゃんと生きて。約束だよ」





先生が出した小指に合わせるように、私も小指を伸ばす。





「指切りげんまん…守ってね?」





ふわっとした笑顔で手を振る先生がだんだん遠くなる。