【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…



「俺は自分自身がよくわからないよ。
ずっとアニキを羨んで妬んで…いつのまにかそんな嫌な感情しか浮かばなくなった」

「それじゃあこれから変えていけばいいんですよ」

「簡単に言うねぇ」

「私が変えてあげますよ」





実際、そんなこと出来るのかわからない。

それでもこんな状態のセンセをなんとかしてあげたかった。

放っておけないよ。





「…出来ないよ」

「出来ますよ。センセが私に、私の気持ちを伝えることを許可してくれたら」

「…そう」





ちゃんとわかってるの?

伝えたいのに、伝えられない辛さが。





「だから、たかが失恋したくらいで地球が滅びそうな顔しないでください」

「やっぱりこれは…失恋?」





本当に今日のセンセはどうかしてる。


こんなにセンセを乱すことが出来るのもその人だけなんだろうな…


そう思うと少し腹が立つ。

…仕方ないけど。





「寝ぼけてるんですか。
最初は"お兄さんを好きなその子"として見てたけど気付いたら"その子自身"を見るようになったんでしょ?

なのに結局はお兄さんの元に行ってしまって、"やっぱりお兄さんには適わないだけ"って自分の心に言い訳しようとしてるだけですよ」

「…そうか。俺はアニキにも勝てないし、その上失恋したのか」

「そんなに勝つことが大事ですか。
お兄さんにはお兄さんの良いとこがあって、センセにはセンセの良いとこがある。
それじゃダメなんですか?」

「…」





そう言ってセンセは口を閉ざしてしまった。