【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…



「この前、高校の同級生に会ったよ」

「そう…なんですか」

「俺の好きだった人」

「…そうですか」





それを私に言って、どうしろというんだ。


センセが誰を好きでいようと仕方ないことなのに。





「アニキと結婚するんだってさ。
俺はやっぱりアニキには勝てない。何をやっても俺はアニキに適わない。その子、教師だったアニキをずっと想ってたんだ」

「センセって…お兄さんと張り合いたいんですか?
だからお兄さんを好きだって言う子に目がいったの?」

「そんなこと…」





ない、と言いかけて口ごもる。


地雷を踏んでしまった…?





「…あるのかもな、もしかしたら」

「意外に負けず嫌いですよね」

「俺のことよく見てるね」





そりゃあ見ますよ。

今どんな顔してるのかな、とか

今何してるのかな、とか


いつでも気になっちゃうもん。





「それは…まぁ担任ですし」

「"担任"だから?」





センセは意地悪く笑う。


何を言わせようとしているのか…





「それを…言わせてくれないのはセンセの方じゃないですか」

「そうだね…俺が悪かった」

「素直で…なんだか怖いです」





いつもと違って、どこかしゅんとしているセンセ。

落ち込んでるの…?